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任意整理と個人再生の違いとは?ケース別にどちらを選ぶべきか解説

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任意整理と個人再生の違いとは?ケース別にどちらを選ぶべきか解説

「任意整理と個人再生の違いとは?」
「自分の借金総額や収入状況に合った解決方法を知りたい」
「家族に迷惑をかけずに生活を安定させたい」

上記の疑問をお持ちの方は、クレジットカードやカードローンの返済が重なり、月々の支払いが苦しい状況に置かれているのではないでしょうか。

任意整理と個人再生は、どちらも借金の負担を軽減する手続きですが、その性質は大きく異なります。

この記事では、任意整理と個人再生の違いとケース別に選び方を紹介します。

債務整理後の生活はどう変わるのかまで紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

目次

1.任意整理と個人再生の違い

任意整理と個人再生の違いは、以下の9つです。

  • 手続きの条件
  • 減額される範囲
  • 手続きにかかる期間
  • 費用の相場
  • 手元に残せる財産
  • 保証人への影響
  • 信用情報(ブラックリスト)への影響
  • 官報への掲載有無
  • 周囲へのバレやすさ

それぞれ解説します。

1-1.手続きの条件

任意整理は、安定した収入と返済の意思があれば利用できることが多く、比較的柔軟な条件です。一方個人再生は、「継続的な収入の見込み」や「借金総額が5,000万円以下」といった法律上の要件をクリアし、裁判所の認可を得る必要があります。

ご自身の状況が法的な条件を満たすかは、手続きを選択するうえで重要なポイントです。

1-2.減額される範囲

任意整理と個人再生の決定的な違いは、借金の減額範囲にあります。任意整理が将来利息のカットを主目的とするのに対し、個人再生は元本自体を大幅に圧縮できます。

たとえば、200万円の借金が個人再生では100万円に減額される可能性がありますが、任意整理で元本は減りません。元本が減るかどうかは、両者を比較するうえで最も重要な違いです。

1-3.手続きにかかる期間

手続きにかかる期間の目安は、任意整理が「3カ月〜6カ月程度」、個人再生は「6カ月〜1年程度」です。任意整理は債権者との交渉で進むため比較的スピーディーですが、個人再生は裁判所での複雑なプロセスを経るため時間がかかります。

解決までのスピードを重視するかどうかも、判断材料のひとつになります。

1-4.費用の相場

費用の相場は、任意整理が比較的安価な一方で、個人再生では裁判所に収入印紙・官報公告料・予納郵便切手などの実費が必要になります。任意整理の費用は主に専門家への依頼費用ですが、個人再生ではそれに加えて裁判所への予納金なども必要です。

手続き費用を準備できるかどうかも、どちらを選ぶかを考えるうえで重要です。

1-5.手元に残せる財産

手元に残せる財産については、任意整理の方が柔軟性が高く、財産を守りやすいです。任意整理は交渉対象の借金を選べるため、自動車ローンを手続きから外して車を残すことが可能です。

一方、個人再生には「住宅ローン特則」があり家を手放さずに済みますが、家以外の高価な財産は返済額に影響する場合もあるため注意が必要です。

1-6.保証人への影響

保証人への影響は、任意整理と個人再生で大きく異なります。任意整理では、保証人が付いた借金を手続きから外すことで、保証人への請求を避けられます。

しかし、すべての借金を対象とする個人再生では、保証人に一括返済の請求がいくことになります。保証人への影響は、手続きを選択するうえでとくに重要なポイントです。

1-7.信用情報(ブラックリスト)への影響

信用情報への影響、いわゆる「ブラックリストに載る」という点では、任意整理と個人再生に違いはありません。ただし、信用情報の登録期間は機関・情報種別で異なります。

CIC・JICCの契約/返済等情報は原則「契約期間中および契約終了後5年以内」、KSCの官報情報(破産・民事再生開始決定)は「決定日から7年を超えない期間」です。どちらの手続きでも信用情報機関に事故情報として登録され、その間は新たなローン契約やクレジットカードの作成が困難になります。

債務整理をおこなう以上、信用情報への影響は避けられないです。

関連記事:【徹底解説】任意整理とブラックリストの関係!いつ登録され何年で消える?

1-8.官報への掲載有無

官報へ氏名や住所が掲載されるかどうかも、両手続きの大きな違いです。私的な交渉である任意整理は、官報に載ることは一切ありません。対して、公的な手続きである個人再生は、手続きの開始時と認可決定時に氏名や住所が官報に掲載されます。

官報を日常的に見る人は稀ですが、情報が公になる事実は知っておきましょう。

1-9.周囲へのバレやすさ

周囲への知られやすさで言えば、任意整理の方がバレにくい手続きです。任意整理は専門家と債権者間の交渉で進み、官報掲載もないため、家族に知られずに終えられる可能性が高いです。

一方、個人再生は官報掲載や書類準備の過程で知られる可能性が相対的に高まります。プライバシーをどれだけ重視するかも、手続き選びの大きな基準です。

関連記事:任意整理が会社にバレることはある?バレる可能性のあるケースや対策

2.任意整理と個人再生のどちらを選ぶべきか

任意整理と個人再生のどちらを選ぶべきか、個人の状況によって、まったく異なります。

  • 任意整理が向いているケース
  • 個人再生が向いているケース

ケース別にしていきます。

2-1.任意整理が向いているケース

任意整理が向いているケースは、4つです。

  • 家族に内緒で手続きしたい
  • 保証人が付いている借金がある
  • 除外したい債権者(財産)がある
  • 手間や費用を抑えたい

それぞれ解説します。

2-1-1.家族に内緒で手続きしたい

任意整理は、家族や周囲に知られずに手続きを進めたい場合に最適な方法です。手続きは専門家と債権者間でおこなわれる私的な交渉であり、裁判所からの通知が自宅に届いたり、官報で名前が公開されたりすることがないためです。

同居している家族に気づかれるリスクが低いため、「家族に内緒で借金を減額したい」という方にとって有効な選択肢となります。

関連記事:債務整理が家族に与える影響 | 家族にはバレる?【司法書士が解説】

2-1-2.保証人が付いている借金がある

保証人がいる借金を交渉の対象から外せるため、保証人に迷惑をかけずに債務整理を進められます。任意整理は、どの債権者と交渉するかを利用者が選べるからです。

たとえば、親族が保証人になっている奨学金だけを手続きから除外し、それ以外のカードローンなどを整理することが可能です。大切な保証人に影響をおよぼしたくない場合には、任意整理が最も適した方法となります。

2-1-3.除外したい債権者(財産)がある

自動車ローンなどを手続きから除外することで、特定の財産を手元に残したい場合に任意整理は有効です。整理する借金を選べるため、財産に紐づいたローンを対象から外すことが可能です。

ローン返済中の車を手放したくない場合、その自動車ローンを任意整理の対象から外し返済を続けることで、車を維持しながらほかの借金を整理できます。生活や仕事に不可欠な財産を守りたいニーズに、任意整理は柔軟に応えられます。

2-1-4.手間や費用を抑えたい

時間的・金銭的負担を軽くしたい場合、個人再生に比べて手続きがシンプルな任意整理が適しています。

任意整理は、裁判所を介さないため、複雑な書類準備や裁判所への出頭が不要です。専門家に依頼すれば、ほとんどの手続きを代行してもらえ、裁判所に納める予納金もかかりません。

できるだけ早く、費用を抑えて借金問題を解決したい方には、任意整理が向いています。

2-2.個人再生が向いているケース

個人再生が向いているケースは、以下の3つです。

  • 借金額が大きく元本の返済が難しい
  • 任意整理に応じにくい債権者がいる
  • 給与差し押さえなどを受けている

ひとつずつ解説します。

2-2-1.借金額が大きく元本の返済が難しい

利息カットだけでは返済が追いつかないほど借金が大きい場合、元本自体を圧縮できる個人再生は有効な解決策です。

個人再生は、裁判所の認可を得て、法律にもとづき借金元本を最大で5分の1から10分の1にまで減額できる強力な手続きです。たとえば500万円の借金が100万円まで圧縮される場合もあり、月々の返済負担は劇的に軽くなります。

任意整理では解決できないほどの多額の借金を抱えている方にとって、個人再生は生活再建への大きな一歩となります。

2-2-2.任意整理に応じにくい債権者がいる

貸金業者などが交渉に応じない場合でも、法的な強制力を持つ個人再生であれば手続きを進められます。個人再生は、裁判所が認可した再生計画にもとづき返済を進めるため、一部の債権者が反対しても法的な効力がおよびます。

任意整理では強硬な債権者との交渉が頓挫することもありますが、個人再生ならそうした債権者も対象に含めることが可能です。債権者との交渉が難航する場合、個人再生が確実な解決策となり得ます。

2-2-3.給与差し押さえなどを受けている

既に給与などが差し押さえられている場合、個人再生を申し立てることでその強制執行を中止できます。個人再生の手続きを開始すると、法律の規定により、債権者は給与差し押さえなどの強制執行ができなくなるためです。

裁判所から再生手続開始決定が出ると、進行中の差し押さえは効力を失い、給与を全額受け取れるようになります。差し押さえによって生活が脅かされている緊急性の高い状況では、個人再生が有効な手段です。

3.任意整理のメリット・デメリット

任意整理のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

3-1.任意整理のメリット

任意整理のメリットは、以下の2つです。

  • 整理の対象とする債務を選べる
  • 手続きや費用の負担が比較的少ない

それぞれ解説します。

3-1-1.整理の対象とする債務を選べる

任意整理の大きなメリットは、整理する借金を利用者が自由に選べる点です。裁判所を介さず債権者と個別に交渉するため、保証人が付いている奨学金などを手続きから除外し、それ以外の借金だけを整理するといった柔軟な対応が可能です。

個々の事情に合わせて整理範囲を調整できる点が、任意整理の最大の強みとなります。

3-1-2.手続きや費用の負担が比較的少ない

任意整理は、ほかの債務整理に比べ、時間や費用の負担が比較的少ないです。裁判所を通さないため手続きがシンプルで、裁判所に納める費用もかからないからです。

多くの場合、司法書士や弁護士などの専門家に依頼すれば、債権者との交渉から和解契約まですべてを任せられ、依頼者の手間は最小限で済みます。できるだけ費用の負担を抑え、スムーズに借金問題を解決したい方にとって、任意整理は利用しやすい手続きです。

3-2.任意整理のデメリット

任意整理のデメリットは、以下の2つです。

  • 元金の減額は難しい
  • 貸金業者が交渉に応じない場合がある

ひとつずつ解説します。

3-2-1.元金の減額は難しい

任意整理のデメリットは、原則として元本が減らない点です。あくまで債権者との交渉にもとづく合意のため、将来利息のカットが中心となり、元本の免除に応じてもらえるケースは極めて稀です。

借金の総額が大きい場合、利息をカットしただけでは3年〜5年での返済が困難になることもあります。任意整理の場合は、自由が効く分、減額効果に限界があると理解しておきましょう。

3-2-2.貸金業者が交渉に応じない場合がある

任意整理は法的な強制力がないため、一部の貸金業者が交渉に応じず、手続きが進まない可能性があります。あくまで当事者間の話し合いであり、債権者には交渉に応じる義務がないからです。

業者の方針や取引期間の短さなどを理由に、厳しい条件しか提示されないこともあります。全ての債権者と必ずしも和解できるわけではないという不確実性が、任意整理のリスクとなります。

4.個人再生のメリット・デメリット

個人再生のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

4-1.個人再生のメリット

個人再生のメリットは、以下の2つです。

  • 借金が大幅に圧縮される
  • 任意整理が難しい債権者も対象にできる

それぞれ解説します。

4-1-1.借金が大幅に圧縮される

個人再生の最大のメリットは、裁判所の認可を得て、借金の元本を大幅に圧縮できる点にあります。再生計画にもとづき、法律で定められた最低弁済額まで借金を減額できるためです。

たとえば、借金が500万円ある場合、100万円まで減額できる場合もあります。強力な減額効果によって、多額の借金を抱えた人でも生活再建の道筋を立てられるのが個人再生の大きな魅力です。

4-1-2.任意整理が難しい債権者も対象にできる

個人再生には、任意整理の交渉に応じない強硬な債権者も、手続きの対象にできるメリットがあります。個人再生は法的な手続きであり、再生計画が裁判所に認可されると、一部の債権者が反対してもすべての債権者がその内容に拘束されるからです。

任意整理では和解が難しい業者なども含め、すべての借金を公平に整理できます。債権者の意向に左右されずに手続きを進められる点は、個人再生の大きな利点です。

4-2.個人再生のデメリット

個人再生のデメリットは、以下の2つです。

  • 整理の対象とする債務を選べない
  • 手続きに時間と費用がかかる

ひとつずつ解説します。

4-2-1.整理の対象とする債務を選べない

個人再生は、原則として全ての借金を整理の対象としなければならず、一部だけを除外することはできません。これは「債権者平等の原則」が法律で定められているためです。

そのため、保証人が付いている借金を手続きから外せず、保証人に一括請求がいくことになります。また、自動車ローンも対象となるため、車は引き揚げられるのが一般的です。手続きの対象を自由に選べない制約は、個人再生を利用するうえで注意すべき点です。

4-2-2.手続きに時間と費用がかかる

個人再生は、裁判所を介する複雑な手続きのため、任意整理に比べて時間と費用が多くかかります。申立てには厳格な要件があり、多数の書類を準備する必要があるほか、裁判所とのやり取りも複数回発生するためです。

手続き期間は「6カ月〜1年程度」かかるのが一般的で、専門家費用に加えて裁判所に納める予納金も必要となり、費用総額は高くなる傾向にあります。

個人再生を検討している場合は、時間的・金銭的な負担が大きい点を理解しておく必要があります。

5.債務整理後の生活はどう変わる?信用情報やローンへの影響

債務整理後は一定期間、生活に制約が生じますが、それは生活を再建するための重要なプロセスです。

債務整理後は、事故情報が一律で信用情報機関に登録され、新たな借入やクレジットカードの作成が制限されます。いわゆるブラックリストに載った状態です。

事故情報の登録期間はCIC・JICCで『契約終了から5年以内』、全国銀行協会のKSCでは『破産・個人再生開始決定から7年以内』と定められています。これらの期間が過ぎれば、通常は再びカードやローンを利用できるようになります。

任意整理後の生活については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

関連記事:任意整理したらその後の生活はどう変わる?事前に把握すべき注意点や対策

6.まとめ

任意整理と個人再生は、どちらも借金の負担を軽減する手続きですが、その性質は大きく異なります。任意整理が債権者と直接交渉する「私的な手続き」であるのに対し、個人再生は法律に基づき裁判所を介する「公的な手続き」です。

任意整理と個人再生の選択は、ご自身の将来を左右する重要な判断です。それぞれにメリット・デメリットがあり、最適な方法は一人ひとりの状況で異なります。

福岡市博多区にある佐藤司法書士事務所では、設立当初から債務整理に注力しており、15年以上の豊富な経験と実績があります。

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もしこのようにお悩みの方は、一人で悩まず、お気軽に佐藤司法書士事務所へご相談ください。

コラム監修者

佐藤司法書士事務所 佐藤 直幸
佐藤 直幸
福岡市で債務整理業務15年以上で経験豊富な司法書士
借金の問題は「早く解決したほうがいい」ということに尽きます。
長く放置して解決できなくなる前にご相談ください。
相談しにくいことではあると思いますが、敷居を低くしてお待ちしていますので
遠慮なくご連絡いただけると幸いです。
誠心誠意対応させていただきます。早めにご相談ください。
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