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自己破産できない人やケースとは?自己破産できないときの対処法も解説

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自己破産できない人やケースとは?自己破産できないときの対処法も解説

「自己破産できない人はいる?」「自己破産できない条件って何?」と疑問に思ったことはありませんか?過去に自己破産ができなかったことがある方も少なくないのではないでしょうか。

実際に、自己破産できない理由やケースは多くあります。そこでこの記事では、以下の内容を解説しています。

  • 自己破産できない理由
  • 自己破産できないケース8選
  • 自己破産をしないほうがいいケースもある
  • 自己破産できないときのリスク
  • 自己破産できないときの2つの対処法

これから自己破産を検討している方はもちろん、過去に自己破産できなかった方もぜひ最後までご覧ください。

目次

1.自己破産できない理由は2つ!

自己破産ができない理由は、大きく分けて2つです。

  • 債務の支払いができる
  • 免責不許可事由に該当する

それぞれ解説していきます。

1-1.自己破産できない理由①債務の支払いができる

自己破産は、「返済能力が完全にないこと」が必要な条件です。たとえば、一時的な失業や他の短期的な事情ではなく、借金を将来的に返済できるという見通しが立っていない限りは、自己破産は認められません。

また失業をして収入が途絶えている状況でも、預金があって返済は可能という場合は、自己破産は認められないのです。

1-2.自己破産できない理由②免責不許可事由に該当する

自己破産の場合、「なぜ借金を作ってしまったのか」が大切なポイントとなります。自己破産を申請する際、借金の原因や行動に問題がある場合、裁判所は返済の免除を許可しないことがあるからです。これを「免責不許可事由」と呼びます。

たとえば、以下のようなケースが免責不許可事由に該当します。

  • ギャンブルや過度の浪費
  • 株式投資をはじめとした自己の選択による負債
  • 意図的な財産を隠し
  • 裁判所への不正確な情報の提供
  • 自己破産を前提とした借入
  • 特定の債権者だけを優先して返済する行為
  • 前回の免責から7年以内の再度の自己破産申請

ただし、上記に該当しても悪質性が低い場合は、自己破産の申請が通る可能性もあります。

2.自己破産できないケース8選

ここからは、さらに具体的な「自己破産できないケース」を8個に分けてご紹介していきます。

  1. 免責不許可事由に該当する
  2. 債務の額が100万円以下と少額である
  3. 過去7年以内に自己破産・個人再生をおこなっている
  4. 自己破産手続きを進める費用を払えない
  5. 破産手続きに協力できない
  6. 意図的に財産を隠し自己破産を申し立てた
  7. 債権者に対し平等に債権を返さなかった
  8. 裁判所の調査に対し虚偽の説明をした

自身に当てはまるものがないか、確認をしてみてください。

2-1.自己破産できないケース①免責不許可事由に該当する

免責不許可事由に該当する場合は、前述の通り自己破産によって借金返済を免除されることはありません。

ですが一部例外として、免責不許可事由に該当していても、真摯に借金返済と向き合い生活の立て直しへ取り組む姿勢があれば、裁判所の判断で返済免除が認められることがあります。これを、「裁量免責」といいます。

免責不許可事由に該当し裁量免責を認められない場合は、自己破産をすることはできません。

2-2.自己破産できないケース②債務の額が100万円以下と少額である

債務の総額が100万円以下のように少額である場合、返済不能と見なされることが難しく、自己破産できないことがあります。裁判所は、債務者に返済能力があるのかを以下のような項目に基づいて判断します。

  • 借金の総額や詳細
  • 所有資産の総額
  • 職業と収入
  • 家族構成
  • 生活状況(生活費の状況含む)および借金の発生原因や経緯

一般的に、借金総額が年収の3分の1以下であれば、借金を返済できるとして自己破産できないことが多いです。収入や所有する資産の総額を借金総額が上回っていない場合や、換金可能な資産を保有している場合も同様です。

2-3.自己破産できないケース③過去7年以内に自己破産・個人再生をおこなっている

自己破産は、一度限りではなく複数回の申請が可能です。ですが、過去に自己破産や個人再生で免責を受けてから7年が経過していない場合は、再度の自己破産申請は許可されません。

加えて、2回目以降の自己破産申請には、初回よりも厳格に審査されることが一般的です。

2-4.自己破産できないケース④自己破産手続きを進める費用を払えない

自己破産を申し立てる際に必要な「予納金」が支払えない場合、手続きは進められません。予納金とは、自己破産のプロセスにおいて裁判所に事前に支払う必要のある一連の費用を指します。予納金は、以下のような様々な経費に使われます。

手数料の種類詳細
破産申立手数料自己破産を申し立てるために必要な基本的な費用
官報公告費自己破産に関する情報を官報に掲載し、公にするための費用
​​予納郵券破産申立人から債権者へ自己破産の通知を郵送する際の経費
引継予納金破産管財人が破産手続きを遂行するために必要な費用

これらの費用総額は、管轄する裁判所や個々の破産申請内容によって異なります。特に、破産管財人による財産調査や債権者への配当などが必要な「管財事件」では、予納金が約20万円以上必要になることが一般的です。これを一括で支払うのが難しい場合も少なくありません。

予納金の一括払いが難しい場合には、法テラスへの相談によって一時的に立て替えてもらったり、裁判所へ引継予納金を分割払いにしてもらったりなどの対処法があります。

2-5.自己破産できないケース⑤破産手続きに協力できない

自己破産の過程で裁判所や破産管財人へ非協力的な態度を取ることは、自己破産を進めるうえで障害となります。たとえば、以下のような行為で破産手続きに協力しない場合は、自己破産できない可能性が高いです。

  • 裁判所に対して虚偽の報告をする
  • 破産管財人の調査を妨害する
  • 破産管財人の指示に従わない
  • 破産管財人へ脅迫をする

自己破産によって、債務者の借入先である債権者は大きな損失を被ります。そのため、債務者が所有する財産が換価されたうえで、債権者に対して公平に資産が分配される必要があります。

ですが、破産手続きに協力しない態度をとることで、債権者が持つ権利を侵害することになりかねず、自己破産が認められない可能性が高まるというわけです。

2-6.自己破産できないケース⑥意図的に財産を隠し自己破産を申し立てた

自己破産の際、借金の免除と引き換えに、生活に必要最低限を除く全ての財産を売却し、その収益を債権者に分配する必要があります。そのため、自己破産をすれば「自由財産」(自己破産後も所有が認められている財産)を超える資産は処分されるのが通常です。

しかし、一部の人々は自由財産の処分を避けるため、自己の資産を過小申告することがあるんです。意図的に財産を隠したことが明らかになると、債権者の権利を侵害するものとみなされ、免責不許可の対象となる可能性が高まります。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。

引用元:破産法第252条 | e-Gov法令検索

さらに、隠された財産の額が大きい場合、詐欺破産罪(破産法第265条)で罰せられる恐れもあり、絶対に避けるべき行為です。

(詐欺破産罪)
第二百六十五条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為

引用元:破産法第265条 | e-Gov法令検索

2-7.自己破産できないケース⑦債権者に対し平等に債権を返さなかった

特定の債権者に対して優先的に返済する行為を「偏頗弁済」といい、他の債権者の平等性を害するため禁止されています。

自己破産においては、債務者の自由財産を超える資産を換金し、その資金を債権者へ「公平」に配分することが原則となっています。債務者が自己破産する際、全ての債権者は均等に扱われなければならないためです。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
(中略)
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。

引用元:破産法第252条 | e-Gov法令検索

偏頗弁済に多くみられるのは、親族・友人・職場などからの借金に対して、迷惑をかけたくないという動機から、優先的に返済を続けるケースです。これによって、そのほかの債権者に対する分配資産が不足し、債務者としての権利が害されてしまいます。

場合によっては、裁判所から優先的に分配金を受け取った債権者に対し、その分の額を破産財団に返還するよう要求されることもあります。かえって迷惑をかけることにもなりかねないため、絶対にやめましょう。

2-8.自己破産できないケース⑧裁判所の調査に対し虚偽の説明をした

自己破産手続き中、裁判所は申立人に関して多くの調査を行います。この際、説明を拒否したり、虚偽の回答をしたりすると、免責不許可事由に該当するとして借金の免除が認められなくなるリスクがあります。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
(中略)
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。

引用元:破産法第252条 | e-Gov法令検索

裁判所からの調査には誠実に対応し、自己破産を円滑に進められるようにしましょう。

3.自己破産をしないほうがいいケースもある

一方で、「自己破産をしないほうがいいケース」も存在します。以下のようなケースです。

  • 抱えている債務に非免責債権が多い
  • 職業・資格の制限を受ける
  • 保証人に迷惑をかけたくない
  • 奨学金を自己破産の対象にすることで家族に迷惑がかかる
  • 自宅を残したい

それぞれ解説していきます。

3-1.抱えている債務に非免責債権が多い

自己破産をしても、すべての借金から解放されるわけではありません。特に、非免責債権と呼ばれる返済義務が免除されない債務も存在します。借金の大部分が非免責債権に該当する場合、自己破産をしても大きな意味はありません。非免責債権には、以下のようなものが含まれます。

  • 税金
  • 公共料金
  • 社会保険料
  • 損害賠償金
  • 罰金
  • 養育費
  • 慰謝料
  • 従業員への賃金

これらの債務に対しては、公益の観点や特定の債権者保護のため、破産法によって返済免除が認められていません。自身の債務状況について、今一度確認をしましょう。

3-2.職業・資格の制限を受ける

自己破産の手続きを進める間、一部の職業や資格が一定期間停止・制限されることがあります。以下のような職業や資格を有する場合、自己破産の影響を慎重に考慮しなければなりません。

  • 士業(弁護士、税理士、司法書士など)
  • 宅地建物取引士
  • 証券会社の外務員
  • 保険外交員
  • 警備員

免責決定が下されると職業・資格は回復しますが、その期間は数か月から1年ほどと短くはありません。職業や資格を喪失することによる収入の途絶えや、仕事からの離脱が難しい場合、自己破産は現実的ではないです。

3-3.保証人に迷惑をかけたくない

債務に保証人がいる場合、自己破産によって借金が保証人に対し一括請求されることになります。よって自己破産を進める際は、保証人も同様に手続きを進めることが望ましいです。

保証人は本人に代わって借金を支払う責任があるため、債権者は債務者に対する債務の金額を保証人へ求償する権利も持っています。よって保証人は、債務者の破産手続きに関与し、裁判所から通知を受けることになるというわけです。

保証人に自己破産の事実を知らせたくない、あるいは迷惑をかけたくない場合は、自己破産以外の選択肢を探す必要があります。

3-4.奨学金を自己破産の対象にすることで家族に迷惑がかかる

学生時代に奨学金を利用していた場合、自己破産で整理する債務の対象になります。自己破産によって、借り入れ本人の返済義務は免除されますが、奨学金の連帯保証人として親族が指定されていた場合、親族に請求が及ぶことになります。

このような状況を避けるためには、親族を連帯保証人として指定せず、保証料を支払って保証機関の連帯保証を受ける「機関保証制度」を利用するのも選択肢の一つです。しかし、既に親族を連帯保証人として指定しており負担をかけたくない場合は、自己破産の選択を避けるほかないでしょう。

3-5.自宅を残したい

自己破産をおこなうと、所有している不動産を手放す必要があります。自己破産では自由財産以外のものをすべて売却しなければなりませんが、自由財産に不動産は含まれません。

よって自宅を保持したい場合は、自己破産以外の債務整理を検討すべきです。

4.自己破産できないときのリスク

自己破産が認められると借金の返済義務が免除されますが、免責が許可されない場合は借金の返済義務が継続します。この状態を放置すると、債権者による訴訟の提起や、財産が差し押さえられるリスクが存在します。

そのため、自己破産できない状態を放置するリスクは大きいでしょう。

5.自己破産できないときの2つの対処法

自己破産できないときは、大きく分けて2つの対処法を頭に入れておきましょう。

  • 即時抗告する
  • 自己破産以外の債務整理を選ぶ

5-1.即時抗告する

自己破産の免責が許可されなかった場合、不許可決定を受けてから1週間以内に「即時抗告」をおこなうことで、決定に異議を唱えることが可能です。

(即時抗告期間)
第三百三十二条 即時抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。

引用元:民事訴訟法第332条 | e-Gov法令検索

即時抗告は、免責不許可を出した地裁の上級審である高等裁判所に提出します。

また、破産債権者も免責許可決定が決定され官報公告に掲載された日から2週間以内に異議申し立てをおこなうことが可能です。

(不服申立て)
第九条 破産手続等に関する裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間とする。

引用元:破産第9条 | e-Gov法令検索

不許可決定が覆る可能性は全体的に高くはないものの、免責の不許可に不服がある場合は即時抗告をおこなうべきでしょう。

5-2.自己破産以外の債務整理を選ぶ

自己破産以外の債務整理を選ぶのも、有効な手段です。状況に応じて、任意整理・個人再生から最適な方法を選ぶようにしてください。

5-2-1.債務を支払える場合は任意整理を選ぶ

借金の総額が少ない場合や、職業や資格に一時的な制限を受けることが問題となる場合、任意整理が自己破産の代替案として考えられます。

自己破産は返済能力が完全に失われていることが条件ですが、安定した収入がある場合や預貯金がある場合など、支払い不能状態にないときは任意整理が適しています。任意整理では、専門家指導のもと返済計画を見直し、利息の削減を図りながら元本の返済を目指します。

ただし、税金・公共料金・社会保険料などの非免責債権は任意整理でも免除されないため、支払いが困難な場合は市区町村役場に相談して支払い方法を調整してもらうようにしましょう。特に税金の滞納は給料振込先の口座の差し押さえのリスクもあるため、早期の対応が必要です。

5-2-2.免責不許可事由に該当するなら個人再生を選ぶ

免責不許可事由に該当し自己破産が困難な場合、任意整理や個人再生といった選択肢を検討してください。

任意整理の基本については前述した通りですが、個人再生は債務の大幅な軽減を可能にする救済策です。債務額を5分の1から10分の1まで減額し、現実的な返済計画を立てて経済的再生を目指す手段となります。

5-2-3.自宅を残したいなら個人再生を選ぶ

住宅ローンの返済中の場合、自宅を保持したい願望があるならば、個人再生を選択するのが適切です。個人再生には、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)という自宅を守ることが可能な制度が含まれています。ただし、住宅ローン特則を利用するためには、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 個人再生の要件を満たすこと
  • 住宅ローンを利用している
  • 対象不動産が本人が居住している不動産であること
  • 対象不動産の床面積の半分以上が居住用であること
  • 不動産に設定されている抵当権が住宅ローン以外にないこと
  • 保証会社による代位弁済から6か月以内であること

これらの条件を満たさなければ、住宅ローン特則の適用は受けられませんので注意が必要です。

6.まとめ

このコラムでは、自己破産できない理由について解説をしてきました。債務の支払額が少額であったり、免責不許可事由に該当したりする場合は、自己破産ができない可能性があります。

ですが、自己破産できないときの対処法もなかには存在します。法律的な知識も必要となる場合もあるため、自己判断ではなく専門家へ意見を聞き、最適な選択をおこなうようにしてください。

福岡市博多区にある佐藤司法書士事務所では、設立当初から自己破産に注力しており、15年以上の豊富な経験と実績があります。加えて、初回相談・着手金・減額成功報酬0円で承っております。

「自己破産をしたいが車は手放せない」
「自己破産をすると家具や生活用品まで失う?」
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このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽に佐藤司法書士事務所へご相談ください。

コラム監修者

佐藤司法書士事務所 佐藤 直幸
佐藤 直幸
福岡市で債務整理業務15年以上で経験豊富な司法書士
借金の問題は「早く解決したほうがいい」ということに尽きます。
長く放置して解決できなくなる前にご相談ください。
相談しにくいことではあると思いますが、敷居を低くしてお待ちしていますので
遠慮なくご連絡いただけると幸いです。
誠心誠意対応させていただきます。早めにご相談ください。
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