債務整理
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「自己破産を検討しているけど、管財事件って何?」「どんな場合に管財事件として扱われるの?」といった疑問はありませんか?管財事件とは自己破産の一種で、特定のケースで管財事件として扱われることがあります。
そこでこの記事では、以下の内容を解説しています。
この記事を読むことで、管財事件についての理解が深まり、どのように進むのか、どんな対策をすべきなのかがわかります。管財事件について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
管財事件は、自己破産の一種です。そもそも自己破産とは、支払い不能に陥った個人や企業が法的に債務を免除してもらう手続きです。自己破産によって債務者の資産は売却され、得られた収益は債権者へ配分されます。最終的には、多くの債務が法的に免除されることになるという流れです。
ここからは、管財事件の概要について解説をしていきます。
管財事件は、自己破産のなかでも債務者が一定の財産を持っている場合に進められ、破産管財人が指名されることから「管財事件」という名称がついています。破産管財人は、債務者の財産を管理・処分し、その収益を債権者に配分する役割があります。
管財事件には、「少額管財」と「特別管財(通常管財)」という2つの種類があります。
一部の裁判所、たとえば東京地裁では、破産手続きにおける「特別管財(または通常管財)」と「少額管財」という二つのカテゴリに分類して運用しています。これらのカテゴリは、破産法には明確には定められていませんが、実務上の区分として存在するものです。
特別管財の場合、通常は手続き費用として最低でも50万円の「引継予納金」が必要ですが、この高額なコストが、自己破産を検討するうえで大きなハードルとなっていました。これを解消するため、東京地裁をはじめとするいくつかの裁判所では、よりハードルの低い「少額管財」制度を導入したという流れです。
少額管財では引継予納金を20万円とすることで、より多くの人が自己破産を選択しやすくなっています。少額管財は「小規模管財」や「簡易管財」とも呼ばれ、その名の通り小規模な財産の破産案件に適用されます。
破産手続きを少額管財で進めたい場合は、専門家へ依頼して財産状況や借金の背景を事前に詳しく調べてもらい、適切な書類を準備することが前提となります。個人で直接自己破産の申立てをすると、少額管財を利用できないリスクがあるため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
自己破産には、管財事件のほかにも「同時廃止」という進め方があります。
自己破産は、基本的に債務者の資産を調べて売却し、その収益を債権者に分配することが目的です。ただし、債務者の持つ財産がなく、清算を進めても債権者に配分する金額が得られない場合もあります。そのような状況において、破産法では以下のように規定されています。
第二百十六条 裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。
引用:破産法 | e-Gov法令検索
破産手続き開始とともに廃止されるということから、「同時廃止」と称します。
同時廃止は、管財事件と比較して手続きを進めやすいです。管財事件の場合、管財人との面談や裁判所での免責審尋期日など複数の工程が必要で、手続きが煩雑になります。一方で同時廃止は、資産がなく個人事業主でもない場合に適用され、手続きが大幅に簡略化されます。
そのため、条件が合致する場合は同時廃止の利用がおすすめです。
管財事件の場合、同時廃止に比べて追加費用が発生します。管財事件の場合、管財人との面談や裁判所での審尋などの手続きが必要になり、弁護士の手数料が増加します。また、管財人に対する報酬も申立時に支払う必要があります。
これらの費用は、弁護士に依頼する際に計画的に積み立てることで対応可能ですが、同時廃止の場合に比べて全体の費用は高くなります。
同時廃止について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:自己破産の同時廃止とは?同時廃止となるケースや手続きの流れ
自己破産は前述した同時廃止と管財事件のどちらかに振り分けられ進むわけですが、管財事件として扱われる可能性のあるケースにはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、以下4つのケースに分けて解説していきます。
それぞれ見ていきましょう。
財産の総額が20万円を超える場合、破産申立ての際には管財事件として扱われる可能性が高まります。特に、以下の財産がこの基準を満たしているかどうかが重要です。
これらの財産が個別に20万円以上の価値がある場合、管財人による詳細な調査が必要となります。よって破産手続きが複雑になる可能性があり、事前に司法書士や弁護士などの助言を得ておくことがおすすめです。
個人の自己破産では、現金が33万円以上ある場合管財事件として扱われます。
反対に、現金が33万円未満の場合は同時廃止として扱われることが一般的です。自己破産後もその人の生活は続くわけですから、最低限の金額として現金33万円未満の場合は同時廃止として扱われることが多くなっています。
個人事業主、法人、または法人の代表者が破産手続きをおこなう場合、管財事件として扱われます。
個人事業主や法人は、複雑な財務状況を抱えています。自己破産の過程で適切な会計処理が疑問視される場合や資産の隠蔽が疑われる場合があるため、破産管財人による詳細な調査が必要とされます。
免責不許可事由があると見られる場合、管財事件として詳細な調査がおこなわれます。
自己破産は、「なぜ自己破産に至るほどの借金を作ってしまったのか」が重要なポイントです。そして借金を作った理由や行動に問題があるとき、裁判所が借金免除を許可しないことがあります。これを「免責不許可事由」と呼び、以下のようなものが含まれます。
これらの事由がある場合、破産管財人は免責の適切性を評価するために面談や追加調査を実施する必要があります。また上記に該当しても、悪質ではないと判断されれば免責が許可されることも。不安がある場合は、専門家にアドバイスを求めましょう。
免責不許可事由がある場合は、自己破産をできない可能性があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:自己破産できない人やケースとは?自己破産できないときの対処法も解説
ここからは、管財事件の流れ・進み方について解説をしていきます。管轄する地方裁判所によって細かい工程の差はありますが、一般的には以下のような流れで進みます。
それぞれ見ていきましょう。
自己破産を個人で進めるのはハードルが高く、ほとんどの方が司法書士や弁護士へ相談をします。専門家に相談することで、債務調査を適切におこなってくれたり、必要書類を過不足なく準備してくれたりと、個人では難易度の高い項目をスピーディーに進めてくれるのがメリットです。
自己破産に必要な書類の準備が完了次第、該当地区の地方裁判所へ提出します。特に少額管財案件では、申立て前に最低でも20万円の予納金を積み立てることが求められるため、あらかじめ資金を用意する期間が必要です。緊急を要する場合は、裁判所に予納金の分割支払いを相談する手段もあります。
自己破産申立て後、裁判官との面接によって、同時廃止になるか管財事件になるかが決定されます。面接は、即日面接や開始前尋問として実施されるのが一般的です。
申立代理人と共に破産管財人候補者の事務所を訪れ、三者での打ち合わせがおこなわれます。この打ち合わせは通常30分から1時間で終了し、申立人は質問に対して正直に回答する必要があります。不明点は後日、申立代理人を通じて回答します。
そして①の面接から数日後、裁判所が破産手続きの開始を決定すれば、自己破産手続きの開始です。
管財事件が決定されると、裁判所が破産管財人を選任し、予納金を指定の口座に入金します。
破産管財人は申立人の財産を調査し、必要に応じて売却手続きをおこないます(このとき、申立人が生活を送れる最低限の財産は残されます)。申立人は、破産管財人からの調査・売却に真摯に対応しなければなりません。非協力的な態度をとることで、免責が認められない可能性も出てくるため、十分に注意してください。
破産管財人は債権者や裁判所に対して財産状況と手続きの進行状況を説明します。
債権者集会後、裁判所は破産管財人や債権者に対して申立人の免責についての意見を尋ねます。申立人は、この場で将来の生活計画について質問を受けたり、意見を述べる機会があります。
配当可能な財産がある場合、債権者に対して配当が行われます。配当が不可能な場合は、手続きが終了されることもあります。(同時廃止)
免責審尋が終了した後、裁判所は免責許可の決定をおこないます。この許可が下りると、官報に申立人の氏名及び住所が掲載され、2週間以内に債権者からの異議申し立てがなければ、申立人の免責が正式に認められます。
自己破産を管財事件として進めることになったときは、以下の5点に注意しましょう。
それぞれ解説していきます。
管財事件においては、破産管財人に対して支払う予納金の準備が不可欠です。予納金は一般に20万円から50万円程度が必要とされ、この金額は事案の複雑さによって異なります。
通常は一括での支払いが求められますが、裁判所によっては分割での支払いが認められることも。予納金については、事前に司法書士や弁護士へ相談してください。
関連記事:【徹底解説】自己破産の予納金とは?金額の目安や支払えないときの対処法
管財事件が進行している間、破産管財人からの調査には誠実に対応しましょう。免責許可を目指すためには、以下のような行動が重要です。
これらの対応が適切でないと、免責が許可されないリスクがあります。破産管財人との関係を良好に保つことで、スムーズに手続きを進められます。
破産手続き中に旅行や転居を計画する場合は、破産管財人の許可が必要です。申立代理人を通じて、必要な計画を破産管財人に提出しなければなりません。また、早めに申請することで、承認を得られる可能性が高まります。
破産管財人からの許可なく行動せず、計画的に申請することが重要です。
管財事件では、破産管財人によって申立人に送られる郵便物がチェックされます。すべての郵便物は破産管財人の事務所へ転送されるため、重要な書類や料金の支払いが必要な郵便物がある場合は、事前に破産管財人に通知しておくとスムーズです。
自己破産手続き中は、特定の職業や資格が制限されることが一般的です。制限される職業や資格には以下が含まれます。
これらの制限は手続きが完了すると解除されるため、その後は再び職業に就くことが可能です。この期間中、制限される職業に従事している場合は、他の職に就くなどの対策が必要です。
管財事件は同時廃止より費用がかかりますから、費用が支払えないケースも出てきます。費用が支払えなくなるリスクを少しでも抑えるための対策として、以下の3つを実践しましょう。
一つずつ解説していきます。
自己破産の手続きを検討している際、初回相談無料の法律事務所を選ぶようにしましょう。専門家との初回相談には、5,000円程度の費用がかかることが多く、初回相談無料の事務所を選ぶことで費用の負担が軽減されます。
たとえば、地域の弁護士会や市区町村が主催する無料法律相談も有効です。借金問題に精通した専門家は、相談者の経済的困難を理解しており、多くの場合初回の相談を無料で受け付けています。
自己破産を専門家に依頼する場合、報酬が高額になることが多いです。一括での支払いが難しいのであれば、報酬を分割払い可能な事務所を選ぶようにしましょう。
佐藤司法書士事務所では、自己破産に関する初回相談無料及び報酬の分割払いのどちらにも対応をしています。支払いに関する不安がある方は、ぜひ佐藤司法書士事務所までご相談ください。
経済的に特に厳しい状況にある場合、法テラスを利用する手段もあります。法テラスは民事法律支援を提供しており、経済的な負担を軽減しながら必要な法的支援を受けられるためです。
法テラスでは、民事扶助による弁護士費用の立て替えをおこなっており、返済額も月5,000円からと非常に低く設定されています。専門家への依頼費用をすぐに払えないという方には特におすすめです。
管財事件とはなにか、どのようなケースが管財事件になるのかを解説してきましたが、財産状況や債務状況については人によって千差万別であり、自身が管財事件に該当するのかわからないという方も多いと思います。
特に判断が困難なのが、「免責不許可事由の調査が必要な場合」です。具体的な判断基準は、裁判官の決定に依存します。そのため、事前に専門家へ法的なアドバイスを求めましょう。専門家であれば、さまざまなケースを経験しており、どのようなケースであれば免責が許可されやすいのかを熟知しています。
管財事件になるかわからない、不安があるという方は、迷わず専門家に相談するのがおすすめです。
管財事件とは自己破産の一種です。自己破産のなかでも、債務者が一定の財産を持っている場合は管財事件として進められ、破産管財人が指名されることから「管財事件」という名称がついています。破産管財人は、債務者の財産を管理・処分し、その収益を債権者に配分する役割があります。
管財事件になるかどうかは、申立人の債務状況や免責不許可事由の調査が必要かなど、さまざまな要素から判断されます。自身の自己破産が管財事件になるのかわからないという方は、迷わず司法書士や弁護士などの専門家へ相談しましょう。
福岡市博多区にある佐藤司法書士事務所では、設立当初から自己破産に注力しており、15年以上の豊富な経験と実績があります。加えて、初回相談・着手金・減額成功報酬0円で承っております。
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コラム監修者