債務整理
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「自己破産を検討しているけど、免責がちゃんとおりるか不安」とお考えの方も多いのではないでしょうか。借金の返済義務を無くすことが目的の自己破産ですが、免責がおりないと返済の義務が残ってしまうため、どのような場合に免責がおりないのかを理解しておかなければなりません。
そこでこの記事では、以下の内容を解説しています。
この記事を読むことで、自己破産の免責についての理解を深め、免責がおりなかったときの対処法を理解することができます。自己破産を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそも、自己破産で免責がおりないことはあるのでしょうか?過去のデータをもとに、自己破産と免責不許可の関係について見ていきましょう。
まず、自己破産で免責がおりなかったらどうなるのかを解説します。自己破産で免責がおりない場合、借金の返済義務が継続することになります。
そのため免責がおりない状態を放置してしまえば、債権者からの請求が続き、給与や財産の差し押さえのリスクが残ります。また、新たな借入れや契約が困難になる可能性も高いです。
実際のデータを確認してみると、2020年の調査では免責不許可件数が「0件」でした。
参考:2020年破産事件及び個人再生事件記録調査 | 日本弁護士連合会
この数字は一見、すべての自己破産申立てが認められるように見えますが、免責がおりない可能性は依然として存在します。また、免責不許可となる可能性をすべて取り除いてから自己破産申請がおこなわれているとも考えられます。
前述の参考資料によると、自己破産の成功率は約97%でした。しかし、この統計には注意点があります。約97%という数字は、実際に申立てをおこなった人の中での成功率を示しています。つまり、申立て前に諦めた人や、他の債務整理方法を選択した人、さらに弁護士から自己破産は難しいと助言された人などは含まれていません。
つまり、自己破産の申立てを検討する際は、自身の状況を客観的に分析し、適切な専門家にアドバイスを求めることが重要です。
自己破産が認められなかった約3%のケースには、様々な理由が考えられます。主な要因としては、申立ての却下や棄却、申立ての取り下げ、申立人の死亡などです。
特に自己破産申立ての場合、書類の不備などにより却下されるリスクが高まります。適切な準備と専門家のサポートを受けながら、正しい手順で手続きを進めることが重要です。
自己破産で免責がおりないケースを、以下の9つに分けて解説していきます。
一つずつ解説します。
ギャンブルや浪費、投資が借金の主な原因である場合、自己破産が認められない可能性が高くなります。これは、これらの行為が法律上の「射幸行為」に該当するためです。射幸行為には、パチンコや競馬などの一般的なギャンブルだけでなく、株取引やFX取引も含まれます。
また浪費には、過度な旅行や飲食、ホストクラブの利用、スマートフォンアプリへの過剰な課金なども入ります。このような行為による借金は、債務者の責任が重いと判断される可能性が高いのです。
自己破産の手続き中に財産を隠したり、不当に価値を下げたりすると、免責が認められない可能性があります。
自己破産手続きでは通常、一定以上の価値がある財産は債権者への配当のために差し押さえられます。そのため、差し押さえを避けるために財産を隠したり、名義変更したり、他人に贈与したりする行為は問題視されるのです。ただし、やむを得ない事情がある場合は例外となることもあります。
クレジットカードの不当な利用も、自己破産の免責が認められない理由になり得ます。特に、クレジットカードの現金化や、カードで購入した商品の安値転売などの破産手続きを遅らせる目的でおこなわれる行為が該当します。
破産申立ての直前に嘘をついて借入れをする行為も、免責不許可の理由となります。具体的には、破産申立ての日から1年以内に、返済能力がないにもかかわらず返済できるかのように装って借入れをおこなうケースです。特に、借入れ後に一度も返済せずに自己破産を申し立てると、当初から返済する意思がなかったと判断される可能性が高くなります。
このような行為は、債権者を欺く悪質な行為とみなされ、裁判所から厳しい判断を受けることになるのです。
自己破産において、一部の債権者にのみ優先的に返済をおこなうことは、「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、免責不許可事由の一つです。偏波弁済は、すべての債権者を公平に扱うという破産法の基本理念を損なうため、認められていません。
たとえば、親族からの借金だけを返済したり、住宅ローンのみを継続して支払ったりする場合が該当します。このような行為は他の債権者に不利益をもたらし、破産申立人自身にもメリットがありません。
自己破産の際に、財産や収入に関する書類を捏造したり隠したりすることは認められていません。
自己破産の申立て時、裁判所によって破産申立人の経済状況が詳細に調査され、給与明細や売上台帳などの書類をくまなくチェックされます。これらの書類を改ざんしたり、提出を拒否したりすることは、裁判所の審査を妨げる行為とみなされます。
特に、銀行口座の入出金履歴は1〜2年ほど遡って調べられるため、小細工は通用しません。正直に全ての情報を開示することが、自己破産の手続きを円滑に進める鍵となります。
自己破産の手続きにおいて、債権者名簿に虚偽の情報を記載してはいけません。債権者名簿は、お金を借りている相手を全て列挙するリストであり、裁判所に提出する重要な書類です。特定の債権者を意図的に記載しないことは、債権者平等の原則に反するとして認められていません。(名簿に記載されていない債権者に対して個別に返済できてしまうため)
ただし、単なる不備や記入漏れは免責不許可の理由とはなりません。重要なのは、全ての債権者を正確に記載し、公平な扱いを保証することです。
過去7年以内に債務整理をおこなっている場合、新たな自己破産の申立ては認められません。これは、短期間での繰り返しの債務整理を防ぐための規定です。
また、個人再生手続きの一部をおこなっている場合も同様です。
過去に債務整理をおこなった方は、その内容を確認し、新たな自己破産申立ての可能性について専門家に相談するのが無難でしょう。
関連記事:自己破産は2回目も可能?免責許可の判断基準や注意点を解説
自己破産の手続き中に裁判所や破産管財人によっておこなわれる調査に対し、協力の姿勢を見せないことは、免責不許可事由に当てはまります。具体的には、裁判所から要求された書類の提出、質問への迅速な回答、差し押さえ財産の換金作業などへの協力です。
財産の調査に応じないことや、調査を妨害する行為は、手続きの公正性を損なうものとして扱われ、心証を悪くしかねません。基本的に裁判所や破産管財人は破産申立人の味方と考え、彼らの信頼を失うような行動は避けるべきです。
関連記事:自己破産できない人やケースとは?自己破産できないときの対処法も解説
免責不許可事由に該当しても、「裁量免責」が認められ自己破産を進められることがあります。ここからは、裁量免責について解説していきましょう。
裁量免責は、通常なら自己破産が認められない状況でも、裁判所の判断により免責が許可される特別な制度です。
裁量免責の制度は、破産法の本来の目的に基づいて定められています。破産法は債務者の生活再建の機会を与え、関係者の権利を適切に調整し、債務者の財産を公平に清算することを目指しています。そのため、免責不許可事由に該当するからといって一律に判断を下すのではなく、状況に応じて柔軟な対応が必要となるのです。
免責不許可事由に該当するからと一律に免責を認めないのではなく、借り手と貸し手の双方にとって最適な解決策を見出すための重要な手段として、裁量免責の決定がおこなわれます。
裁量免責の認定は、基本的に裁判所の判断に委ねられており、明確な基準はありません。しかし、判断の際には以下のような点が重要視されているといわれています。
債務者の誠実さや改善への意欲が認められれば、裁量免責が認められる可能性が高まるといえます。
裁量免責が認められるためのポイントは、以下の3つです。
一つずつ見ていきましょう。
自己破産の手続きにおいて、財産調査への積極的な協力は極めて重要です。裁判所や破産管財人からの調査に対し誠実に対応することで、裁量免責の可能性が高まります。
また、自発的に情報を提供するといった前向きな姿勢を示すことも効果的です。このような協力的な態度は、裁判所に対して誠実さと改善への意欲を印象づけます。結果として、裁判所の心証を良くし、裁量免責の判断に好影響を与える可能性が高くなるのです。
借金の原因を明確に理解し、その改善に取り組むことは、裁量免責を得るための重要な要素です。まず、自身の借金の原因を客観的に分析し、認識することから始めます。
たとえば、ギャンブル依存症が原因であれば、専門医の診断を受け、定期的な通院記録を提示することが有効です。浪費が原因の場合は、家計簿をつけて支出を管理し、毎月の貯金額を増やすなどの具体的な改善策を実践します。
借金の原因に真摯に向き合い、具体的な改善策を実行することが、裁量免責の可能性を高める重要な鍵となるのです。
裁量免責の判断において、破産申立人の反省の態度は非常に重要な要素です。裁判所は、破産申立人が自らの行動を振り返り、その過ちを認識しているかを慎重に評価します。この評価において、破産管財人の意見が大きな影響を持ちます。破産管財人は裁判所の代理として破産申立人の状況を詳しく調査し、免責の適否について意見を述べる役割を担っています。例えば、ギャンブルによる借金がある場合、その詳細を包み隠さず破産管財人に説明し、深い反省の念を示すことが重要です。このような誠実な態度は、破産管財人から免責相当との意見を得やすくし、結果として裁判所の判断に好影響を与える可能性が高くなります。真摯な反省の姿勢を示すことが、裁量免責への道を開く重要な一歩となるのです。
関連記事:自己破産の管財事件とは?管財事件になるケースや流れ・注意点を解説
裁量免責は、自己破産の過程で重要な救済措置ですが、全てのケースで認められるわけではありません。裁量免責が認められにくい主なケースは以下の二つです。
このような状況に直面した場合、自己破産の道を諦め、他の債務整理方法を真剣に検討することが賢明です。例えば、任意整理や個人再生など、状況に応じた適切な手段を選択することが重要になります。専門家のアドバイスを受けながら、最適な解決策を見出すことが、財務状況の改善への近道となるでしょう。
自己破産で免責がおりなかった場合は、以下2つの対処法が有効です。
それぞれ解説します。
自己破産の免責不許可が決定した場合、即時抗告という法的手段を取ることができます。即時抗告は、裁判所の判断に不服がある場合に利用できる重要な権利で、官報に掲載された翌日から2週間以内におこなう必要があります。
実際、即時抗告によって決定が覆る可能性は低いです。それでも、新たな証拠や状況の変化がある場合には、即時抗告が有効になります。
自己破産の免責が認められなかった場合でも、他の債務整理手続きに切り替えることは可能です。自己破産以外の債務整理には以下のような手段があります。
任意整理:債権者と直接交渉し、返済計画を立てる
個人再生:裁判所の管理下で返済計画を立てる
これらの方法では、借金の返済義務は残りますが、現状と比較すると返済の負担を大幅に軽減できる可能性があります。特に、返済期間の延長や金利の引き下げなどの条件交渉ができる点が魅力です。自己破産が認められなかった場合でも、諦めずにこれらの選択肢を検討することで、財務状況を改善する道筋を見つけられる可能性が高まるでしょう。
専門家のアドバイスを得ながら、自分に最適な債務整理方法を選択することが重要です。
自己破産の免責がおりない場合、借金の返済義務が継続することになります。以下に該当する場合は、自己破産の免責がおりにくいです。
上記のような免責不許可事由に該当することなく、スムーズに自己破産の申し立てを進めるためには、司法書士をはじめとした専門家への相談が欠かせません。専門家のアドバイスを受けながら、自己破産を確実に成功させましょう。
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