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自己破産するとできないことって何?できないと誤解されがちなことも解説

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自己破産するとできないことって何?できないと誤解されがちなことも解説

自己破産を検討中の方で、「自己破産後に何ができなくなるのかわからない」「自己破産後もできることって何?」といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。実際自己破産後にできなくなることがある一方で、できなくなると誤解されていることも多々あります。

そこでこのコラムでは、以下の内容を解説しています。

  • 【タイミング別】自己破産するとできないこと
  • 自己破産するとできないと誤解されがちなもの
  • 自己破産によって家族に影響のあること

コラムの最後には、自己破産を円滑に進める方法も紹介しています。これから自己破産をしようと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

1.【タイミング別】自己破産するとできないこと

早速、自己破産をするとできないことについて、「手続き中にできないこと」と「手続き後もできないこと」の2つに分けて解説していきます。

1-1.自己破産の手続き中にできない7つのこと

自己破産の手続き中にできないことを、以下の7つに分けて解説していきます。

  1. 債権者への返済
  2. 自動車や不動産・高級品の所持
  3. 特定の職種への就業
  4. 自由な引越しや旅行
  5. 郵便物の受け取り
  6. 預金口座の凍結による口座からの出金
  7. 生命保険の継続

1-1-1.債権者への返済

自己破産をした場合、債務者個人が勝手に債権者へ借金を返済することはできません。債務者が特定の債権者へ返済することを、「偏頗弁済」と呼び、法律で禁止されています。自己破産手続きにおいては、債権者間の公平・平等が重要視されており、特定の債権者だけへの返済は不公平が生じるためです。

そもそも自己破産とは、債務者が持っている資産より、返済すべき債務が多いことで支払い不能になっているときに選択される手続きです。手続きが始まると、債務者が返済可能な分の資産が確定され、裁判所によって選定された弁護士が債権者に対して平等に分配後、残りの返済が免除されます。

債権者に対して債務者の資産が平等に分配されたとしても、大抵の場合は全額返済されることはなく、債権者に不利益が生じることが多いです。よって、いかに公平性が保たれるかが重要となるわけです。

そのため、たとえ家族や知り合いから借金をしている場合でも、他の債権者と同様に破産手続きに従う必要があります。自己破産手続き中の方は、勝手な返済は控えましょう。

1-1-2.自動車や不動産・高級品の所持

自己破産をした場合、自動車や不動産・高価な貴金属などは、債権者に分配するためのお金に換えられるので、手放さなければなりません。

購入から5〜7年以上経過した車については、多くの裁判所では価値を0円と評価されることになっています。そのため、5〜7年以上経過した車を持っている方は、換金されない可能性が高いです。

ただし、ハイブリッド車や電気自動車、外国製自動車、排気量2500ccを超える車などは、5年以上経過していても価値があると評価され、お金に換えられる可能性があります。

1-1-3.特定の職種への就業

自己破産手続きが始まると、特定の職種へ就くことが制限されます。制限される職種には、以下のようなものがあります。

  • 士業系の職種(弁護士・司法書士・税理士・宅地建物取引士・公認会計士・土地家屋調査士など)
  • 警備員
  • 生命保険募集人
  • 証券外務員
  • 貸金業者

これらの職種にすでに就いている場合も、自己破産手続き中は仕事をできなくなるため、十分に注意が必要です。

1-1-4.自由な引越しや旅行

破産手続きが「管財事件」となった場合、破産者は裁判所の許可なく居住地を離れることができません。管財事件の間は、破産管財人が破産者の財産状況を適切に把握する必要があり、破産者がいつでも対応可能な状態でいなければならないからです。

そもそも管財事件とは、裁判所が選任した管財人が破産者の財産の調査や換価、債権者への配当などをおこなう破産手続きのことを指します。管財事件では、破産者の財産管理や換価が管財人に委ねられるため、同時廃止事件に比べて手続きが複雑で、時間もかかる手続きです。

そんななか、破産者が引っ越しをしたり突然長期の旅行に出かけたりしてしまうと、破産管財人による財産調査に支障をきたす可能性があります。そのため、破産者が一定期間居住地を離れる際は、事前に裁判所に申立てを行い、許可を得る必要があるのです。

1-1-5.郵便物の受け取り

管財事件における破産手続きでは、破産手続開始決定後から手続き終了までの間、破産者宛の郵便物は破産管財人に転送され、内容がチェックされます。これは、破産者の財産状況や債権者の有無などを破産管財人が漏れなく確認するためです。

そのため、破産手続き期間中、破産者は自分宛の郵便物を直接受け取ることができません。破産管財人が郵便物の内容を精査した後、破産者に郵便物が郵送されることになります。

1-1-6.預金口座の凍結による口座からの出金

自己破産をすると、預金口座からの出金ができなくなります。自己破産の際、預金払戻請求権も処分の対象となるためです。

通常、口座は解約され、預金残高は破産管財人によって債権者に配分されます。ただし、預金額や裁判所の判断次第では、自由財産として手元に残せる場合もあります。

また、仮に預金が処分対象となり、口座が解約されても自己破産後に新規口座開設はできます。そのため、再び銀行にお金を預けることは可能です。

1-1-7.生命保険の継続

自己破産をすると、生命保険の継続が困難になる可能性があります。解約した際に20万円以上の解約返戻金が受け取れる場合、それは20万円以上の資産とみなされ、解約して債権者に配分しなければならないからです。

つまり、解約返戻金が20万円以上と予想される生命保険については、自己破産後も継続することが難しくなります。

1-2.自己破産手続き終了後もできない4つのこと

自己破産手続きが終了後も、できないことはあります。主に以下の4つです。

  1. 新規の借り入れ(信用情報から抹消されるまで)
  2. 連帯保証人の審査通過(信用情報から抹消されるまで)
  3. 新たな賃貸借契約(保証会社による)
  4. 2回目の自己破産時の借金減額

1-2-1.新規の借り入れ(信用情報から抹消されるまで)

自己破産をすると、一定期間は新たな借入れが困難になります。自己破産の情報が信用情報機関の信用情報に事故情報が登録されてしまうためです(いわゆるブラックリスト)。主な信用情報機関には、以下の3つがあります。

  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

これらの機関に事故情報が登録されると、新規の借入れやクレジットカードの作成は基本的にできません。

ただし、事故情報の登録は永続的ではなく、通常7年から10年で抹消されます。自己破産後、一定期間は新たな借入れが制限されますが、将来的には再び借入れが可能になります。

1-2-2.連帯保証人の審査通過(信用情報から抹消されるまで)

自己破産をすると、5年から7年の間、他人の借入れの連帯保証人になることが難しくなります。新規の借り入れ同様に、審査の過程で信用情報が確認されるためです。

ただし、ブラックリストへの掲載期間は5年から7年であり、その後は削除されます。削除後は、連帯保証人の審査通過が可能になります。

1-2-3.新たな賃貸借契約(保証会社による)

自己破産手続き中に、既存の賃貸借契約が解除されることはありません。ただし、破産手続き終了後に新たな賃貸借契約を結ぶ際には、保証会社による審査が障壁になる可能性があります。

近年、多くの賃貸人が家賃保証会社による保証を契約条件としており、保証会社は賃借人の信用情報を確認します。自己破産の情報が登録されている場合、保証を拒否される可能性があるのです。その結果、賃貸借契約そのものが締結できなくなります。

ただし、賃貸人が別の保証会社や個人保証を認めてくれれば、部屋を借りることは可能です。

1-2-4.2回目の自己破産時の借金減額

自己破産手続きが終了し、借金がゼロになることを「免責許可」といいますが、前回の免責許可から7年以内に再度自己破産する場合、原則として借金をゼロにしてもらえません。

例外的に、2回目の破産に至った理由がやむを得ないものであれば、「裁量免責」という形で借金がゼロになる可能性はありますが、ハードルが非常に高くなっています。

また、前回の自己破産から7年以上経過していても、過去に同じ理由で自己破産している場合、借金をゼロにしてもらえない可能性があります。

典型例としては、過去にギャンブルによる借金で自己破産し、その後再びギャンブルで借金を作ってしまった場合などです。このような状況では、借金がゼロになる可能性は極めて低いでしょう。

2回目の自己破産については、以下のコラムをご覧ください。

自己破産は2回目も可能?免責許可の判断基準や注意点を解説

2.自己破産するとできないと誤解されがちなものもある

自己破産するとできないことがある一方で、自己破産したらできなくなると誤解されがちなものもあります。今回は、よくある誤解として10個の項目を解説していきます。

2-1.自己破産終了後は自由に資産を持てる

自己破産の際には、自宅不動産や自動車、高価な貴金属等の資産を一時的に手放さなければなりません。しかし、自己破産終了後は、新たに稼いだお金で再びこれらの資産を自由に持つことができます。

破産手続き中は債権者への公平な分配のために資産を処分する必要がありますが、手続き終了後は、そのような制限はなくなるのです。

たとえば、自己破産で自宅を手放した方が、終了後に新たな住宅ローンを組んで家を購入することも可能です。自動車や貴金属等についても同様に、自由に購入できるようになります。

つまり、自己破産は一時的な資産の制限であり、終了後は通常通り資産を持てるようになるのです。自己破産が資産形成の永続的な障壁になることはありません。

2-2.家族がブラックリストに載ることはない

自己破産の影響は、あくまで破産者本人に限定されます。自己破産しても、その他の家族がブラックリストに載ったり、借入れができなくなったりすることはありません。

また、家族の自己破産が官報に掲載されることで、他の家族の進学や就職に影響が及ぶことはないというわけです。

ただし、破産者の連帯保証人になっている家族は注意が必要です。主債務者である家族が破産すると、債権者から連帯保証人に請求がくる可能性があるためです。

たとえば、あなたのご両親が自己破産し、あなたがご両親の連帯保証人になっていた場合、債権者からご両親へ請求が来る可能性があります。

自己破産が連帯保証人にどのような影響を与えるのかは、以下のコラムを参考にしてください。

自己破産で連帯保証人に与える影響は大きい!迷惑をかけない方法はある?

2-3.戸籍や住民票には載らない

自己破産したという事実は、戸籍や住民票には一切記載されません。

破産手続きは裁判所でおこなわれ、記録は裁判所に保管されます。しかし、戸籍や住民票とは直接関係がないため、破産の事実が公的な文書に反映されることはないのです。

2-4.銀行口座は作れる

自己破産をしても、新しい銀行口座を作ることは可能です。破産手続きにより既存の預金口座を解約する必要はありますが、新たな口座開設は制限されていません。

また、自己破産後はクレジットカードの作成ができなくなりますが、銀行口座に付帯するデビットカードは利用できます。デビットカードは預金残高に連動するサービスで、個人の信用情報とは関係がないためです。

つまり、自己破産は銀行口座の開設自体を制限するものではなく、破産後も金融サービスを一定程度利用できるというわけです。

2-5.選挙権は無くならない

自己破産をしても、選挙権や被選挙権が失われることはありません。

日本国憲法では、国民の選挙権と被選挙権が保障されています。自己破産はあくまで経済的な問題を解決する手段であり、政治的権利に影響を及ぼすものではないのです。

そのため自己破産後も、破産手続きとは関係なく通常通り選挙に参加できます。

2-6.年金は受け取れる

自己破産をしても、公的年金の受給権は影響を受けません。国民年金や厚生年金といった公的年金は、最低限の生活を保障するために、破産手続きの対象外とされているのです。

ただし、企業年金などの私的年金は差し押さえの対象になります。解約返戻金が20万円を超える場合、強制的に解約され、超過分が差し押さえられることになります。

つまり、自己破産は公的年金の受給には影響しませんが、私的年金については一定の制限を受ける可能性があります。年金の種類によって、破産手続きの影響が異なるのです。

2-7.生活保護も受けられる

自己破産をしても、生活保護の受給は可能です。また、破産手続きによって生活保護の受給額が減額されることもありません。

生活保護は、最低限度の生活を保障するための制度であり、経済的に困窮している方を支援するものです。自己破産はあくまで債務の整理を目的とした手続きであり、生活保護の受給とは直接関係がないのです。

たとえば、生活保護を受給中の方が自己破産をしても、破産手続きが完了するまでは従来通りの金額を受け取れます。破産後も、生活に困窮している状況に変わりがなければ、引き続き生活保護を受けることが可能です。

2-8.会社に知られることはない

自己破産の事実が会社に知られることは少なく、多くの方が会社に知られずに破産手続きを進めています。自己破産は個人の経済的問題であり、職務遂行能力とは直接関係がないためです。

また、仮に会社が自己破産の事実を知ったとしても、それだけを理由に従業員を解雇することはできません。解雇には合理的な理由が必要であり、自己破産はその理由にはなり得ないのです。

あなたが自己破産をしたとしても、会社に知られるリスクは非常に低く、仮に知られたとしても解雇をはじめとした不利益を被る可能性は極めて少ないといえます。

2-9.養育費の支払いや受け取りは継続する

自己破産をしても、養育費の支払いや受け取りは継続します。養育費の支払い義務は、破産手続きによって免除されることはありません。

養育費は子どもの健全な成長のために必要な費用であり、親の経済状況に関わらず支払われるべきものです。そのため、自己破産をしても、養育費の支払い義務はそのまま残るのです。一方、あなたが養育費を受け取る側の場合、相手の自己破産によって養育費が受け取れなくなることはありません。

自己破産は養育費の支払いや受け取りには影響を及ぼさず、子どもの福祉を守るために、養育費のやり取りは継続されます。

2-10.スマートフォンや携帯の契約もできる

自己破産をしても、スマートフォンや携帯電話の契約は可能です。ただし、機種代金を分割払いにする場合、信用情報によっては審査に通らない可能性があります。

携帯電話会社は、分割払いの審査の際、利用者の信用情報を確認します。自己破産をしていると、信用情報に傷がつくため、審査に通らないことがあるのです。

ただ、自己破産が携帯電話の契約自体を妨げるわけではありません。審査に通らない場合でも、一括払いで機種を購入することは可能です。

3.自己破産によって家族に影響のあること

自己破産によって家族がブラックリストに載ることはないが、連帯保証人になっている場合は債権者から返済を求められることになると解説しました。

ではそれ以外で考えられる家族への影響として、どのようなものがあるのでしょうか。以下の4つが考えられます。

  • 今まで住んでいた家や使っていた車がなくなる
  • クレジットカードの家族カードが利用できなくなる
  • 契約していた保険が解約される
  • 子ども名義で貯めていた預金が返済にあてられる

家族に対してこれらの影響があると考えられる方は、自己破産以外の債務整理も視野に入れなければなりません。

4.自己破産を円滑に進めるために

現在自己破産を検討されている方は、今後手続きを円滑に進めるために、以下の2点を意識してください。

4-1.インターネット上の情報だけを鵜呑みにしない

自己破産を検討する際、インターネットや周囲から情報を集めることは重要ですが、得られた情報をそのまま鵜呑みにしてはいけません。ネット上では、運営元がはっきりしていないメディアや専門家ではない人が書いたものなど、誤った情報が数多く存在するためです。

たとえば、自己破産のデメリットとして実際には起こり得ないことが書かれていても、それを鵜呑みにしてしまうと、自己破産の申し立てを先延ばしにしてしまい、借金問題をさらに悪化させる可能性があります。

正しい情報を見極めることが重要ですが、専門知識がない場合は難易度が高いのも事実。そのため、専門家のアドバイスを求めることが賢明です。

4-2.専門家からのアドバイスを受ける

自己破産に関する正しい情報を自分で見極めるのは容易ではありません。また、個人の状況によって適切な対応も異なります。そこで、司法書士や弁護士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

債務整理の専門家であれば、個人の状況に応じた的確なアドバイスが可能です。初回相談が無料の事務所も多いため、相談料の負担を気にせず利用できます。

また専門家であれば、あなたの状況を踏まえて、自己破産以外の選択肢も含めた最適な債務整理の方法を提案してもらえることも。専門家のアドバイスを受けることで、自己破産に関する誤った情報に振り回されることなく、適切な判断が可能です。

5.まとめ

自己破産後は、資産の保有が制限されたり、新たに借り入れすることができなくなったりします。自己破産後の債権者の利益が、少しでも保たれるようにするためです。

ですが一方で、自己破産終了後は資産の保有や銀行口座を新規で開設することは可能です。これから自己破産を検討されている方は、自己破産によってどんな影響があるのかを正しく理解するためにも、専門家へ相談されることをおすすめします。

福岡市博多区にある佐藤司法書士事務所では、設立当初から自己破産に注力しており、15年以上の豊富な経験と実績があります。加えて、初回相談・着手金・減額成功報酬0円で承っております。

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コラム監修者

佐藤司法書士事務所 佐藤 直幸
佐藤 直幸
福岡市で債務整理業務15年以上で経験豊富な司法書士
借金の問題は「早く解決したほうがいい」ということに尽きます。
長く放置して解決できなくなる前にご相談ください。
相談しにくいことではあると思いますが、敷居を低くしてお待ちしていますので
遠慮なくご連絡いただけると幸いです。
誠心誠意対応させていただきます。早めにご相談ください。
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